こんにちは。相続専門の公認会計士・税理士の石倉英樹です。
新型コロナウィルスの感染拡大により、多くの方が不自由な生活を余儀なくされています。特に、事業を営んでいる方々にとっては経済的な影響も甚大です。
そこで、今回のコラムでは、知っていると助かる税務上の優遇策やその考え方について、『国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取り扱いに関するFAQ』を参考に、ポイントを絞って解説いたします(本コラムは2020年5月28日時点の情報をもとに執筆しております)。
一時に納税をすることにより事業の継続や生活が困難となるときや、災害で財産を損失した場合などの特定の事情があるときは、税務署に申請することで、最大1年間、納税が猶予されます。
しかし、現行法上の納税猶予とは別に、令和2年4月30日の新型コロナ税特法の成立・施行により、新型コロナウイルス感染症の影響により収入が大幅に減少している方に向けて、納税の猶予の特例(特例猶予)が創設されました。
具体的には、以下のいずれの要件も満たす場合、所轄の税務署に申請すれば、納期限から1年間、納税の猶予(特例猶予)が認められ、猶予期間中の延滞税は全額免除されるとともに、担保の提供も不要となります。
【特例猶予の要件】
なお、令和2年2月1日から同3年1月31日までに納期限が到来する国税が対象となります。すでに納期限が過ぎている未納の国税であっても、令和2年6月30日までであれば、遡って特例猶予を申請可能です。
これまで、中小企業者等(資本金の額が1億円以下の法人など)が利用可能だった「青色欠損金の繰戻し還付制度」について、資本金の額が1億円超10億円以下の法人も利用可能となりました。
この制度は、青色申告書を提出する法人に、確定申告書を提出する事業年度に生じた欠損金額がある場合には、その事業年度開始の日前1年以内に開始した事業年度に欠損金額を繰り戻して法人税の還付を受けられる制度です。
わかりやすく言うと、前期に利益が出たため納税をしたが、今期大幅な赤字が出てしまった場合には、今期の赤字を前期の利益と相殺させて、税金の還付を受けることが可能となる制度です。令和2年2月1日から令和4年1月31日までの間に終了する事業年度に生じた欠損金額について適用されます。
大規模法人(資本金の額が10億円を超える法人など)の100%子会社及び100%グループ内の複数の大規模法人に発行済株式の全部を保有されている法人等は除かれますが、資本金の額が1億円超10億円以下の法人についても青色欠損金の繰戻し還付を受けることが可能となりますので、ぜひご検討ください。
これまで、中小企業経営強化税制の適用ができる設備は「生産性向上設備」や「収益力強化設備」でしたが、「テレワーク等のための設備」も対象に追加されました。
中小企業経営強化税制とは、青色申告書を提出する中小企業者などが、指定期間内に、経済産業大臣の認定を受けた経営力向上計画に基づき取得等をした一定の規模の設備について、指定事業の用に供した場合、即時償却又は設備投資額の7%(資本金の額が3,000万円以下の法人などは10%)の税額控除をすることができる制度です。
テレワーク等のために、遠隔操作、可視化、自動制御化のいずれかに該当する設備投資を行った中小企業の方々はこの制度の利用の検討をお勧め致します。
企業が、賃貸借契約を締結している取引先等に対して賃料の減額を行った場合、その賃料を減額したことに合理的な理由がなければ、減額前の賃料の額と減額後の賃料の額との差額については、原則として、相手方に対して寄附金を支出したものとして税務上、取り扱われることになります。
しかしながら、賃料の減額が、例えば、次の条件を満たすものであれば、実質的には取引先等との取引条件の変更と考えられますので、その減額した分の差額については、寄附金として取り扱われることはありません。
この取扱いは、テナント以外の居住用物件や駐車場などの賃貸借契約においても同様となります。
なお、今回ご紹介した税制上の措置を利用する場合には、顧問税理士またはお近くの税務署にお問い合わせをお願いいたします。
石倉 英樹
石倉公認会計士事務所所長
相続対策専門の公認会計士/税理士として活動する傍ら、『笑って・学んで・健康に!』をモットーとして、硬いテーマとなる相続問題や認知症対策、振り込め詐欺対策などを笑いに変える社会人落語家。
東京・埼玉を中心に口コミで噂が広がり、終活落語の高座の数は年間80回を超える。
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