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2019/7/24 投資

【不動産投資コラム】生産年齢人口が減少し就業環境・ライフスタイルが多様化する社会で勝ち残る不動産オーナーとは

生産年齢人口が減少し続ける日本の現状

ご承知の通り、日本は少子高齢化が進み、既に2008年をピークに人口減少が始まっています。
それにともない、生産年齢人口も減少が進んでいます。生産年齢人口とは、日本では15歳以上65歳未満の年齢に該当する人口を言い、実は1995年の8726万人(全体の69.4%)をピークに、それ以降は減少を続け、2018(H30)年には7484万人と全体の59.77%となり、初めて60%を切りました。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2029(R11)年には7000万人を割り込むとされています。
似たような指標で、労働力人口がありますが、こちらは、15歳以上の人口のうち、「就業者」と「失業者」を合わせたものです。労働力人口は、満15歳以上で労働する意思と能力を持った人と言い換えることができます。
生産者人口が減少にしているにもかかわらず、労働者人口は、2018 年平均で 6830 万人と、前年に比べ 110 万人増加(6年連続の増加)しているのです。これは、これまで労働に参加していなかった、主婦や高齢者の労働参加が増加していることが要因となります。
しかし、労働力人口自体は増加していても、世間では、人手不足が深刻化しているというニュースであふれています。
特に建設業の人手不足は顕著です。建設業の就業者数は1997年の685万人をピークに、2017(H29)年には498万人と3割弱も減少し、しかも急速に高齢化が進んでいるのです。建設業就業者の約34%が55歳以上、29歳以下は約11%というのが実情です。

<建設業就業者の推移><建設業就業者の高齢化の進行>
建設業就業者の推移建設業就業者の高齢化の進行
(出展)総務省「労働力調査」(暦年平均)を基に国土交通省で算出
国土交通省ホームページ:https://www.mlit.go.jp/common/001174197.pdf
(出展)総務省「労働力調査」を基に国土交通省で算出
国土交通省ホームページ:https://www.mlit.go.jp/common/001174197.pdf

建設職人の高齢化や若年層の人材不足の状況下では、2020年の東京オリンピック以降も、ここ数年で高騰した建築費は当面、高止まりするのではないでしょうか。
(2020年 東京オリンピック後の不動産マーケット予測について、前回コラムをご参照ください。)

就業環境の変化や多様化するライフスタイルと不動産の関係

ところで、2019年4月1日より、働き方改革関連法案の一部が施行されました。
厚生労働省の定義によれば、「働き方改革」とは、働く人々が、個々の事情に応じた柔軟な働き方を、自分で選択できるようにするための改革とのことです。
日本は前述した通り、「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」に直面しているともに、「育児や介護との両立など、働く方のニーズの多様化」も進んできています。
こうした中、政府としては、投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境を作ることを重要な課題として挙げています。
働き方改革といえば、「一億総活躍社会を実現するための改革」とも言えると思いますが、今のタイミングで、一億総活躍社会を目標に掲げた背景には、やはり、「生産年齢人口が総人口を上回るペースで減少している」が挙げられると思います。
国の施策としては、労働者の多様な事情に応じた「職業生活の充実」に対応し、働き方改革を総合的に推進するために、

  • 労働時間の短縮と労働条件の改善
  • 雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保
  • 多様な就業形態の普及
  • 仕事と生活(育児、介護、治療)の両立

を掲げています。
具体的には、副業解禁や在宅勤務制度を創設したり、休暇取得を1時間単位で行える仕組みを導入する企業などが増えてきています。
これらの変化は、不動産(オフィス、住まい、まち)にも影響を与えて行くことになります。
国土交通省が「働き方改革を支える今後の不動産のあり方検討会」で、「2030年を目途とする今後の不動産のあり方について」を以下のようにまとめています。

  • 日本社会の変化とあるべき方向性=人々が働き、暮らす上で、場所的・時間的制約から解放する
  • これからの不動産のあり方=1日24時間を充実させる「真に人に優しい不動産」の実現
  • 今後の不動産業の関わり=人口減少社会にあっても、不動産とエリアの価値を相乗的に向上させるためには、交通、運送、医療等、他の業種や行政との連携・協働も重要
  • 先取的・戦略的な不動産政策研究の推進=グローバル社会の中で、産学官が一体となって、戦略的に不動産ビジネスの発展に取り組むことが重要。

こうした背景の中、既に、企業オフィスのフリーアドレス化(社員の固定席の廃止)の増加、シェアオフィス・コワーキングオフィスの急増、二拠点居住というライフスタイルの広まりなどが起こっています。

<2030年頃を見据えたこれからの不動産像>

2030年頃を見据えたこれからの不動産像

(出展)国土交通省ホームページ:http://www.mlit.go.jp/common/001246568.pdf

シェアリングエコノミーの台頭により不動産の活用法も多様化

更には、日本社会では、シェアリングエコノミーの台頭により、「所有からシェアへ」という動きも加速しています。
また、サブスクリプションという定額制サービスが、様々な業界で導入されてきており、家具、飲食店、スーツ、高級時計、自動車などが、月額定額制で利用できる時代になりました。
不動産分野も例外ではなく、オフィスではシェアオフィス・コワーキングスペースなど、住宅ではシェアハウス、二拠点居住など、そしてついには、「アドレスホッパー」というライフスタイルまで登場してきました。
「アドレスホッパー」は、特定の拠点を持たずに、国内外を移動しながら各地の部屋やホテル、旅館、宿泊施設などで暮らしつつ仕事をするライフスタイルです。月4万円の会費を払えば、全国にある数十か所の拠点を転々として暮らせるという「全国済み放題」という多拠点生活をサポートする業態まで生まれてきています。

このように不動産の活用法も多様化してきます。単にオフィスや住宅として入居者に賃貸するという用途だけではなく、Airbnbを代表格とする民泊マッチングサイトなどのプラットフォームを活用すれば、小資本の事業者・個人でも簡単に世界中からの旅行者に部屋を貸すことが可能となりました。
それから、レンタルスペースのマッチングサイトへ掲載すれば、会議やセミナー用途、パーティー用途(ママ会、ゲーム会、コスプレ会、ホームパーティーなど)で、所有または賃借しているスペースを第三者に時間単位で貸し出すことも可能となって来ているのです。
実際に筆者も、時間貸しレンタルスペースを運営しているのですが、当初の想定以上に利用者は多く、物件の立地にもよりますが、単純な賃貸で得られる賃料収入よりも、民泊や時間貸しレンタルスペースとして運用したほうが、収益性が高くなる可能性があります。
これは、駐車場を月極めで貸すのと、コインパーキングとして時間貸しするのとでは、どちらの収益性が高いのかというのと同じ原理の話です。

これからの時代に勝ち残れる不動産オーナーとは

このように生産年齢人口が減少し続ける中、就業環境・ライフスタイルや、不動産の活用法は変化し、多様化しています。
これからの時代に不動産オーナーが勝ち残って行くためには、変化を恐れるのではなく、変化に柔軟に対応する必要性が増して行くのではないでしょうか。
変化に取り残されないように、日頃からアンテナを立てて、情報収集やチャレンジをして行く姿勢が求められます。
そういった意味では、これからの不動産オーナーは、保有する不動産資産のマーケット評価の把握、コスト削減などによる収益性改善の追求、より収益性の高い不動産活用法の模索などをする機会を定期的に持ち、場合によっては、資産の組み換えや活用法の見直しなどの検証・検討を行う必要があると思います。


プロフィール

星 龍一朗

星 龍一朗
リアル・スター・コラボレーション(株) 代表取締役

不動産投資のセカンドオピニオンとして活躍。
1967年生まれ 大手不動産流通会社、不動産投資アセットマネジメント会社などを経て独立。
主に個人向けに不動産投資、賃貸経営のアドバイスや講座・セミナーを通じて、資産形成をサポート。セカンドオピニオンとしてのコンサルティングを提供。

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