2024/9/3 投資 New

信託受益権とは|第3部 信託受益権の活用事例

現物不動産売買と信託受益権売買の違いについてよくわからないという人も多いのではないでしょうか。信託受益権について以下の3部にわたり主要ポイントを読み解きます。

第1部 現物不動産売買との違い
第2部 不動産ファンドの台頭と信託受益権売買
第3部 信託受益権の活用事例

第3部の今回は、信託受益権の活用事例について解説していきます。

不動産ファンドが買い手となり高値売却も可能に

不動産ファンドが買い手となり高値売却も可能に

不動産を売却しようとした際、十億、数十億といった規模の現物不動産については、その買主として候補に挙げられる先には限りがありますし、不動産市況や金融市況が停滞してしまうと、買い手は限られてしまいます。しかしながら、信託受益権を活用することで、買主は、投資家から投資資金を集めた「不動産ファンド」へと姿を変え、このような大規模の不動産の売却も比較的スムーズに売却することが可能になりました。

評価額が高額と予想される規模のオフィスビル、賃貸マンションをはじめとした賃料収入を生むような不動産については、信託受益権売買という手法を取り入れることで、より多くの投資家を振り向かせることができるようになりました。さらにそこで価格競争が生まれることで、競争力のある不動産においては現物不動産として売却するよりも、不動産ファンドが買い手となることにより高値での売却が可能となるケースもあります。

不動産を信託受益権化し売却、購入する場合のフロー

不動産を信託受益権化し売却、購入する場合のフロー

では、実際に現物不動産を信託受益権化して、売却するまでのフローを確認しましょう。

(1)売主

信託受益権の売却活動ですが、信託受益権売買は金融商品取引法の規制を受ける金融商品の扱いとなるため現物不動産の売買と異なる点がいくつかあります。対象となる不動産が現段階では現物不動産であるとしても、実際に売買する際には信託受益権売買となることから、第二種金融商品取引業者の免許を有する会社に売却の仲介を依頼する必要があります。

(2)第二種金融商品取引業者

依頼された第二種金融商品取引業者は、買主の募集・選定にあたっては、法令にのっとり金融商品のリスク等の説明を行います。買主より売買における「購入申込書」等を取得することで、売却条件等を売主と協議し、契約内容につき協議を進めます。

(3)売主・買主

売買代金等をはじめとした売買条件の取り纏め、基本合意書の締結にあたっては対象不動産に係る秘匿性の高い書類を売主から開示をうける必要があることから、秘密保持契約書を締結、あるいは誓約書を取り交わします。

(4)買主

信託受益権を設定するにあたり受託者である信託銀行より、受託できる程度の遵法性を兼ね備えているのか厳密かつ詳細にチェックする事前調査=デューデリジェンスが行われます。その中には対象不動産が建築基準法並びにその他関連法規に基づいて土地、建物が適法な状態にあるか否かを、一級建築士などによる多方面からの厳格なチェックに基づくエンジニアリンレポート等の作成も含まれます。

(5)売主

厳格なデューデリジェンスの結果、是正箇所等があれば売買決済時までに当該箇所を是正する必要があります。

(6)売主・信託銀行

売主と信託銀行との間で信託契約書を締結することにより対象不動産を信託財産とし、当該信託契約において売主は当初委託者兼受益者となり、信託銀行を受託者として対象不動産の運営を信託銀行に委ね、これら信託契約に基づく内容を対象不動産の登記に反映させます。

売主・信託銀行

(7)売主・買主

売主はその受益権を売買対象として、買主と信託受益権売買契約を締結し、当該契約に基づき買主から売主に対して売買代金が支払われることにより、対象不動産の信託受益権が買主へと移転します。以降、買主は受益者となり、対象不動産より得られる利益を収受する権利を持つことになります。

信託受益権が活用されるケース

では、どのようなケースで信託受益権売買が活用されるのでしょうか。 数億、数十億規模の高価格帯不動産の場合、自己資金、あるいは金融機関から融資を受けることを前提としても、現物不動産として単独で購入できる方は限られてきます。昨今、金融機関において個人投資家向けのアパートローンの融資基準が厳格化されている傾向もあります。しかし信託受益権売買とすることで多くの投資家から出資(投資)を受けることができます。高価格帯の不動産においても、対象となる不動産に収益性があり、遵法性が担保されていれば、売却先(購入者)も複数の候補が挙げられることが期待できます。

例えば、都心の一棟マンションを現物不動産として売却することを計画していたところ、不動産の規模が大きすぎるため、現物不動産として購入に前向きに検討される買主が少なかった場合、信託受益権売買とすることで、国内各地から複数の投資家が集まった「不動産ファンド」が買主となり、高値にて売却することが可能となる場合があります。

信託受益権取引で注意すべきこととは

このように信託受益権売買によるメリットは非常に大きいものの、現物不動産売買と比較して買主にとっては、信託報酬がかかるなどの負担もあります。信託受益権売買の場合、不動産の経営を信託銀行に一任していることから、信託報酬が発生します。信託銀行が実際の運営を委託するプロパティマネジメント会社、ビルディングマネジメント会社は質が高いだけに、報酬の負担は重くなり現物不動産売買と比較すると、買主の手元に入ってくる利益額が目減りすることもあります。収益に元本保証がない点も注意が必要です。

信託受益権売買はメリットがある一方でリスクをともなう非常に専門性の高い取引になります。信託受益権については、第二種金融商品取引業の免許を有し、コンプライアンス体制や取引実績を有する会社に相談することが必要です。


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