2023/10/19 経済

不動産に関わる経済指標とその見方|第2部 地価について

不動産に関わる経済指標は複数ありますが、「どの経済指数を参考にすべきか。」「そもそも見方がわからない。」という質問も少なくありません。不動産に関わる経済指標とその見方について主要ポイントを読み解きます。

第1部 景気動向指数について
第2部 地価について
第3部 不動産と日本銀行統計について
今回は、第2部 地価について解説していきます。

永濱 利廣

永濱 利廣(ながはま としひろ) Toshihiro Nagahama
株式会社 第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
担当:内外経済市場長期予測、経済統計、マクロ経済分析

1.地価公示 ― 地価統計の代表格

地価公示は、国土交通省が全国の都市計画区域約1万7000地点の標準的な土地について「正常な価格」を調査し、評価値を毎年知らせる統計である。調査地点、調査項目も多く、公表内容も豊富なことから、土地取引価格の指標等にも使われている。このため、数ある地価統計の中でも最も注目されている。

具体的な作成方法としては、複数の不動産鑑定士が、売り手・買い手の双方に売り急ぎや買い急ぎなどの事情が無い場合に通常成立すると認められる取引価格を鑑定評価し、土地評価委員会が審査や調整をしている。ただ、対象となる基準地点を固定してしまうと、実勢価格との開きが生じ、地価動向の実態を正しく反映しなくなる。このため、調査地点の若干の入れ替えを毎年行っており、地価上昇率の年次推移を見るのには多少難点があることには注意が必要である。また、地価指数全体に言えることだが、あくまで不動産鑑定士が過去の取引を参考にした鑑定評価によって作成されており、地価の変動が大きいこと等による実勢価格の変化が反映されていない。このため、市場の実勢に比べて動きが遅れることにも注意が必要である。

本統計は、原則として毎年3月下旬に1月1日時点の価格が公表され、一般的には「全国平均」と「三大都市圏」「地方圏」の前年比が注目される。ここで注目すべきは「三大都市圏」が「地方圏」に先行した動きを示すことである。事実、過去の「三大都市圏」と「地方圏」の動きを比べても、「三大都市圏」は「地方圏」と同じ方向にやや先んじて大きく動く関係がある(図表1)。従って、「三大都市圏」の動きを見れば、将来の「全国」の変化方向を読み取ることができる。このように、先行きの「全国平均」の動向を考える上で「三大都市圏」の動向は非常に重要となり、地価の動向をいち早く判断するのに非常に有益となる。

また、公示地価は用途別の動きを知ることができ、一般的には「商業地」と「住宅地」の動向が注目される。この中で最も注目すべきは「商業地」である。というのも、「商業地」の変動は景気等に大きく左右され、公示地価全体の動向に多大な影響力を持っているからである。このため、地価の趨勢的な動きを見るにあたっては「三大都市圏商業地」が最も注目される指標である。事実、公示地価のうち代表的な地域・用途別地価の前年比の動きを見ると、「三大都市圏商業地」の変動が最も先行していることがわかる(図表1)。このように、わが国の地価の先行きを見る上では「三大都市圏商業地」の動向が重要となる。

公示地価の推移

2.市街地価格指数 ― 地価統計で唯一の半期データ

市街地価格指数は、日本不動産研究所が全国223都市について市街地の宅地価格の動向について調査し、地域別や用途別の地価の動向を半期ごとに知らせる統計である。地価統計で唯一半期ごとのデータがあることから、数ある地価統計の中でも地価公示に次いで注目されている。

本統計は、「商業地」「住宅地」「工業地」「最高価格地」の指数が公表されており、原則として3月末と9月末のデータがそれぞれ翌々月の下旬頃に公表される。そして、各地点の価格をそれぞれ調査し、基準時点(現在は2000年3月末)を100として指数化している(図表2)。なお、市街地価格指数では「前期比」と「前年同期比」も公表される。

また、市街地価格指数は「地域別」の動きを知ることができる。具体的には、大分類としてまず「六大都市」と「六大都市を除く」に分けられるが、更に「地域別」として主要8地点、「三大都市圏別」として主要9地点の動向が公表される。

その他、市街地価格指数は「実績」以外に「今後の見通し」調査も公表される。この、「今後の見通し」では、用途別として「商業地」「住宅地」「工業地」「最高価格地」、地域別として「六大都市」「六大都市を除く」に分類され、全ての地価について「上半期実績」「下半期見通し」「年間見通し」が公表される。

なお、わが国の地価統計は調査地点の地価変化率の単純平均によって作成されており、例えば北海道の地価の10%変化と東京都心の土地の同率変化を同等に取り扱うことになっている。このため、用途地域別のウェイトが実態と異なっており、特に価格の高い首都圏商業地のウェイトが過小に評価されることから、実態よりも指数が過小に算出される傾向があることには注意が必要である。

市街地価格指数の推移

本コラムの記載は、掲載時点の法令等に基づき掲載されており、その正確性や確実性を保証するものではありません。最終的な判断はお客様ご自身のご判断でなさるようにお願いします。なお、本コラムの掲載内容は予告なしに変更されることがあります。

お問い合わせ Contact us

まずは、お気軽にご相談ください。

お電話でのお問い合わせ

0120-921-582